あれは、うだるような暑さが続いた去年の夏のことでした。夜、少しでも涼しい風を入れようとリビングの窓を開けて網戸にするのが私の日課でした。しかし、その平和な時間は突如として破られたのです。明かりに誘われて、どこからともなく小さな羽虫が部屋の中を飛び回るようになりました。最初は一匹、二匹だったのが、日を追うごとにその数を増し、気付けば毎晩のように虫との格闘を強いられることになったのです。殺虫剤をまいてもきりがなく、根本的な原因を突き止めなければ安眠できないと覚悟を決めました。懐中電灯を片手に、私は侵入経路の捜索を開始しました。そして、ついに発見したのです。リビングの網戸の右下部分、サッシとの間に数ミリほどの致命的な隙間が空いているのを。そこから虫たちが列をなして侵入してくる様子が目に浮かぶようでした。私の長い戦いはここから始まりました。まず試したのは、ガムテープで隙間を塞ぐという応急処置です。しかし、見た目が悪い上に、網戸を開け閉めするたびに剥がれてしまい、根本的な解決には至りませんでした。次に、ホームセンターで隙間を埋めるためのスポンジテープを購入し、貼り付けてみました。これはかなりの効果があり、虫の侵入は激減しました。勝利を確信したのも束の間、今度は網戸の開閉が非常に重くなってしまったのです。スポンジの厚みが絶妙に合っていなかったのでしょう。試行錯誤の末、私が最終的にたどり着いたのは、モヘアと呼ばれるブラシ状のシールでした。これなら柔軟性があるため、開閉を妨げることなく隙間をぴったりと塞いでくれます。慎重に網戸のフレームに貼り付け、そっと閉めてみると、あの憎き隙間は完全に消え去っていました。その夜、一匹の虫もいない静かなリビングで涼しい夜風を感じた時の安堵感は、今でも忘れられません。たかが数ミリの隙間、されど数ミリの隙間。この一件以来、私は家の網戸を定期的にチェックするようになり、住まいの小さな変化に気づくことの大切さを身をもって学んだのでした。
網戸の隙間から入る虫との長い戦い